偶然の出会い

ある冬の午後。この前の突然の寒気で降り積もった雪が、まだ解けきらずに残っている。寒さは相変わらずだが、空はよく晴れている。ここのところ『ミカドの肖像』にはまっていて、横浜線で移動している間も読んでいた。新潮文庫版で、ちょうど上巻が読み終わり下巻に入っていた。ミカド・オペレッタの話。

桜木町で降りて街をぶらついていた。Y'sロードを初めて訪れた。高校生の集団が部活帰りだろうか、ロードバイクの前でがやがやしている。店内を一通り見たあとに、外へ出て紅葉橋を渡る。道にあった看板で伊勢山皇大神宮が近くにあることを知る。

音楽堂が見えたところで右に曲がり、掃部山公園(かもんやま、全くよめなかった)でしばし佇む。エアガンを持った少年が2人、BB弾をじゃらじゃらさせながら階段を上がってきた。横浜駅方面を見下ろしながらiPhoneで写真を1枚撮り、再びもとの道に戻った。

しばらく行くと県立図書館があって、なんとはなしに寄ってみた。時間はもう4時半をまわっていたから、閉館の時刻かもしれない。案の定、貸し出しを締め切るアナウンスが流れていた。受付の方に会釈をしつつ、一番近かった入り口から、一番近いコーナーへとすすんだ。このときはまだ全く予期していなくて、棚にあるCDなどを目にしてそこが音楽に関係したところだと分かっても特に意識に上らなかった。ふと、棚に並ぶ本に目を留めると、そこに『サヴォイ・オペラ』とあった。まさか、と思ったが他にもオペラに関する本があって、その中に、ギルバート・サリヴァンについての記述があったりと、少しの偶然を感じられずにはいられなかった。

閉館10分前のアナウンスで、はっとなっていくつかの棚をそそくさと見てまわって、図書館を後にした。そのあと、伊勢山皇大神宮に少しだけ立ち寄ったが、奥のほうまでは行かず、なにより、神宮の前に伊勢山ヒルズがそびえていたことに驚きを禁じえなかった。ミカドについて思いをめぐらしながら、またしばらく散策を続けた。