雲海という大陸

再び機上の人となった。今日の午後5時、北九州空港発、羽田行きの便に乗って帰ってきた。いつもはスターフライヤーを利用しているが、今回はじめてJALを使った。期待のサイズは同じくらいだけど、機内の構成や添乗員の雰囲気などが、それぞれの個性が出ているように感じられた。

窓側の席を取ることができて、離陸からしばらくの間、外を眺めていた。空からの眺めは少し曇っていたけれど、それもまた空を走る醍醐味だろう。雲の中を進む間、次第に視界が悪くなって薄暗くなっていく様子が、ちょうど日が沈んでいく時間帯とあいまって、一種の沈鬱な気持ちをひき起こした。けれども、そこにある雲は分厚いわけでもなく、飛行機はあっさりと雲上に出てしまった。視界が開け、雲海が広がった。後方に残る夕暮れから、前方に見える青黒い闇までのグラデーションが鮮やかだった。雲海は軽やかに波立ちながら、薄紫色を見せていた。地平線はどこまでも広がり、もしこの雲海が大陸だとしたら、と想像した。雲は海に例えられるけど、なんとなく大陸というイメージが思い浮かんだ。

やがて、日は沈み、空全体が闇に包まれて、ところどころの雲のすき間から街の明滅がのぞいた。そのうちに意識を失って、気が付くとあと15分で着陸するとのアナウンスがあった。雲海という大陸に降り立ちたいという仮想を抱きながら家路に着いた。