見慣れた風景にも

今朝はいつもより少し早めに家を出た。緑で満たされた桜の木の横を通り過ぎるとき、道路に1匹の毛虫を見た。葉の上にはもっとたくさんいるのかもしれない。

同じ道を行く。駐車場をショートカットする。車の往来を確認しながら、道路をわたる。見慣れた風景が続く。ふと、いつも左手に見えてくる診療所の名前が目に飛び込んできた。普段から視野に入っているのかもしれないけれど、その時はじめて、はっきりと把握したように感じた。昇和診療所。看板名の印象を記憶に残しつつ、その直後には今度は運送会社の名前を目にした。西武運輸。いつもお世話になっている名前がこんなにも身近にあった。一瞬の感動を心に刻む。

固有名は、人工物として明瞭に意識されることもあれば、一方では、ただ誰にも知られることなく、ひっそりと、そこにある。歩き慣れた道、何気ない街角、見慣れた風景にも「名前」はある。